2011年4月21日木曜日

原発不安を「原発反対」に変えないために

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● 朝鮮日報より



 韓国は原発廃止には反対のようである。
 せっかくつかんだ快適な豊かさを失いたくない、ということだと思う。
 「貧乏臭い」ことは嫌いという心理である。


朝鮮日報  : 2011/04/21 10:02:17
http://www.chosunonline.com/news/20110421000033

【社説】原発不安を「原発反対」に変えないために


 釜山市機張郡長安邑の古里原子力発電所で、今月12日に1号機が電源系統の故障により稼働中断したのに続き、19日には4号機で一時的に外部電源の供給が止まる事故が発生した。
 韓国水力原子力は事故原因について
 「稼働中断後に3号機で設備を点検していた技術者が、電流が止まったと思い込み電線に触れたため、電源供給が断たれ、同じ系統の外部電源を使用している4号機の電源供給も中断した」
と説明した。

 原発は安全のため、同じ機能の機器を二つ以上設置して片方が故障しても支障が出ないようにし、さらに二つ以上の機器が同じ原因で同時に故障しないよう、系統を分けるのが一般的だ。
 通常なら、1基ごとに異なる複数の系統から電源供給を受け、一つが故障しても機能に異常がないようにする必要がある。
 だが、古里原発3、4号機は一方で事故が発生すると両方とも電源供給がストップするよう設計されていた。
 韓国水力原子力は
 「こうした設計は古里原発の3、4号機だけだ」
と釈明しているが、国民はこの言葉を素直に信じられない。

 今回、点検作業中にミスをした技術者たちは、原発整備の下請け業者に所属している。
 下請け業者の社員はどうしても勤務条件が劣悪になりがちで、責任感も本社社員並みとはいかない。
 構造が異なるさまざまな原発で整備に当たっていると、勘違いする可能性もある。
 原発の稼働に関する主要業務は、日本のように下請け業者に任せるよりも、米国のように原発運用会社が技術のある人材を直接雇用し、管轄することも検討する必要がある。

 政府が専門家と共に進めている安全点検では、まず政府側の点検班と稼働に携わる技術陣が意見を自由に言い合えるムードを作ることが求められる。
 以前からの問題点を拾い出し、責任を追及するばかりでは、それぞれの原発の事情を一番よく知る現場の技術者は、原発の弱点を打ち明けるよりむしろ隠そうとするだろう。

 政府は、今回の原発点検は責任を追及するためでのものではなく、原発の問題点をありのままに示し、対策を立てるためのものだということを明確にする必要がある。
 当局と現場の技術陣は、韓国の原発の安全性、原発に対する国民の信頼を画期的に高めるという覚悟で「原発の弱点に関する総合白書」を作成し、協力して作業に当たるべきだ。

 国民が原発当局の発表を信じられなくなれば、今後発生し得る小さな事故が国民の不安をあおり、やがてその不安が「原発反対」のムードに変わることも考えられる。
 すでに社会の一角では、原発反対運動に火を付けようとする動きもある。
 原発当局は言葉一つ、行動一つでも、国民の信頼を高めようとする努力を示す必要がある。




朝鮮日報  : 2011/04/21 10:00:14
http://www.chosunonline.com/news/20110421000031

古里原発:1号機稼働中断時、1世帯当たり年2万5000ウォン負担
火力発電の割合が増えて燃料費が上昇、夏の電力需要に支障も

 古里原子力発電所1号機の今後の運命は、政府による精密な安全診断の結果によって決まることになった。
 その結果によって再稼働するか、あるいは再稼働が無期限で延期される可能性もある。

 古里1号機の稼働中断に伴う損失は、1日当たり5億2000万ウォン(約3975万円)と見込まれており、年間では1888億ウォン(約144億円)に達する。
 設備容量が58万7000キロワットの古里1号機は、韓国全体の発電量の1.09%を占めている。
 年間の発電量は、周辺の釜山市全体の3カ月間の電力消費量に相当する。

 現時点では、古里1号機が精密点検のために稼働を中断したとしても、電力供給に大きな問題はないことが分かっている。
 韓国電力は
 「4月は電力消費が比較的少なく、また古里1号機の発電量も韓国全体のおよそ1%に過ぎないため、電力供給に大きな支障はない」
としている。
 しかし、冷房によって電力需要が高まる夏まで稼働中断が続いた場合、事情はかなり変わってくる。
 韓電は
 「電力需要が最高潮に達した場合でも、予備電力として400万キロワットを確保できるため問題ない」
と予想している。
 しかし古里1号機の稼働が中断したままだと、余力は340万キロワットにまで低下する。

 エネルギー経済研究院は
 「古里1号機の稼働が全面中断された場合、1世帯当たり年間2万5000ウォン(約1910円)ほど電気料金を上乗せする必要が出てくる」
と予想した。
 古里1号機と同じだけの発電を行うには、例えば火力発電所でLNG(液化天然ガス)などを燃料とした場合、年間でおよそ 5000億ウォン(約382億円)の追加費用がかかるという。
 発電単価は原子力の場合1キロワット/時でおよそ40ウォン(約3.1円)だが、LNGはその3倍以上の125ウォン(約9.5円)となるからだ。




朝鮮日報  : 2011/04/21 10:01:38
http://www.chosunonline.com/news/20110421000032

原発抱える5自治体、IAEAなどの安全性点検を要請へ

 福島第1原子力発電所で事故が発生して以来、韓国で古里原発1号機の安全性や稼働延長に対する議論が高まっている中、原発を抱える五つの地方自治体(釜山市機張郡、慶州市、慶尚北道蔚珍郡、全羅南道霊光郡、蔚山市蔚州郡)が、第三者による点検・評価により住民の安全を保障するよう、政府に求める方針を固めた。

 釜山市機張郡は20日、原発を抱える五つの自治体が26日に行政協議会を行い、原発の安全保障を政府に促す予定だと発表した。
 国際原子力機関(IAEA)や米原子力規制委員会(NRC)、仏原子力安全局(ASN)などが第三者として原発の点検に当たるよう求める要請文を採択するという。

 これと関連し、古里原発のある釜山市と蔚山市の広域・基礎自治体議会が、古里原発1号機の稼働中断を促す決議文を相次ぎ採択した。

 蔚山市蔚州郡議会(チェ・インシク議長)は20日、
 「古里原発1号機の即時廃棄と原発安全性強化策の策定を促す決議案」
を採択。
 蔚山市議会も今月 15日、
 「日本のように原発事故が発生すれば、蔚山地域の住民80万人以上が放射能にさらされる危険が大きく、原発は常に恐怖の対象となる。
 設計寿命が過ぎた古里原発1号機の稼働を中止すると共に、慶州市の月城原発1号機の稼働延長計画も撤回すべきだ」
と訴えた。
 月城原発1号機は2012年末に30年の設計寿命を迎える。




朝鮮日報  : 2011/04/21 09:59:20
http://www.chosunonline.com/news/20110421000029

古里原発:1号機で津波対策を強化へ
長ければ1カ月以上稼働を中断して精密安全診断

 稼働中断から9日目に入った古里原子力発電所1号機(釜山市機張郡)は、教育科学技術部(省に相当)=以下、教科部=による精密安全診断を受けた上で、再稼働するかどうかを最終的に決めることになった。
 精密診断を受けるには、短い場合には1週間、長ければ1カ月以上稼働を中断しなければならない。

 古里1号機の運営を行っている韓国水力原子力(以下、韓水原)の金鍾信(キム・ジョンシン)社長は20日、京畿道果川市にある知識経済部(省に相当)庁舎でブリーフィングを行い
 「古里1号機は政府による精密安全診断を受け、その結果、安全性に問題がないと最終的に確認されてから、再稼働に取り掛かることになった」
と説明した。
 古里1号機は電源系統の故障により、今月 12日から稼働が中断している。

 古里1号機の精密安全診断が正式に決まったことを受け、再稼働の時期は予想以上に遅れることが避けられない状況となった。
 古里1号機は2007年に寿命を延長するか判断するための点検が行われた際、6カ月にわたり稼働を中断したことがある。
 今回の精密診断の目的が、地震や津波に備えるためだけのものなら、1週間ほどで点検は終了するが、すでに点検された内容を改めて確認する作業まで行われた場合、1カ月以上の期間を要する可能性もあるという。
 これは複数の専門家の一致した見方だ。点検の結果によっては、再稼働が無期限延期されることも考えられる。

 韓水原は点検チームの構成や点検の範囲、期間など具体的な内容については、政府と協議を行って決めることにしている。
 教科部のキム・チャンギョン第2次官は21日、この問題についてブリーフィングを行う予定だ。

 古里1号機は、設計の時点から強い地震や津波などはほぼ想定していなかった。
 政府は今回の精密診断を通じ、津波などこれまで想定してこなかった災害が発生した場合にも安全を確保できるようにするための新たな災害防止システムを導入することにしている。

 ソウル大学原子核工学科の黄一淳(ファン・イルスン)教授は
 「現在の非常対応マニュアルで想定されていないような事故が発生した場合に備え、安全施設に対しては徹底した補強を行わなければならない」
と指摘する。

 複数の専門家は、原子炉安全施設などのハード面だけでなく、作業員に対する教育などソフト面も力を入れて点検する必要があると強調する。
 まずハード面では、何よりも電気系統の点検が最優先の課題だ。
 黄教授は
 「外部電源の供給ルートが想定外の地震や津波に耐えられるかどうか、この機会にチェックして補強しておかなければならない」
 「海水ポンプ(原子炉で熱くなった冷却水を冷やすための海水を供給する装置)が浸水する可能性についても点検する必要がある」
などと指摘した。

 ソフト面では、非常時の対応手順や組織体系をチェックすべきとの指摘が多い。
 黄教授は
 「原発を運営する韓水原は、経費や人材を削減するため、協力業者の韓電起工に安全点検やメンテナンスを丸投げしているが、これは非常に大きな問題だ」
 「100万個の部品が必要な原発を、複数の人間が別々に管理しているようではいけない」
などと指摘する。

 ポステック(旧・浦項工大)の金武煥(キム・ムファン)教授(機械工学科)は
 「原発ごとに施設や運営の方式が異なるため、ここで教育を受けても、別の原発ではよく分からないことが発生することも考えられる。
 作業員がどれだけ作業内容を熟知しているかについても、徹底してチェックしなければならない」
と述べた。

 想定外の事故に対する備えをとりまとめる作業も求められている。漢陽大学原子力工学科の諸武成(ジェ・ムソン)教授は「福島第1原発の場合、冷却装置の停止直後から7-8時間後に海水を注入していれば、大きな災害にはつながらなかったはずだ。つまり、有事の際には迅速な意志決定を行うことが、何よりも重要ということだ」と指摘した。

 金武煥教授は
 「最近古里原発で発生しているのは故障であり、事故ではない。
 人為的なミスばかりがいたずらに強調されているが、実際は非常発電機がしっかりと稼働した。
 このように万一の場合に備えるためのシステムが正常に稼働したことの方が重要だ」
と述べた。






[◆ その後]


日経新聞 2011/5/6 19:52
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE2E4E2E69B8DE2E4E2E7E0E2E3E39494E0E2E2E2;at=DGXZZO0195570008122009000000

韓国、740億円投じ原発の安全対策 移動型発電機の設置など

 【ソウル=尾島島雄】韓国政府は6日、福島第1原子力発電所の事故を受け、韓国内に21基ある原発の安全対策措置を発表した。
 今後5年間で計1兆ウォン(約740億円)を投じ、移動型発電機を設置するなど非常用発電設備を強化するほか、最新型の水素除去施設を備える。
 同日には電気系統の故障で4月12日から運転を中止していた釜山市の古里原発1号機の再稼働を許可した。

 福島第1原発では津波により非常用ディーゼル発電機が故障した。
 これを受け韓国政府は2014年までに各原発にある発電機に防水措置を施して排水ポンプを新設する。
 津波を避けるため車両に搭載する移動型発電機も原発ごとに1台ずつ設置。
 古里では防壁の高さを現在の1.7メートルから4.2 メートルに改修する。

 一方、政府は3月下旬から緊急で実施していたすべての原発の安全点検を終了。
 李周浩(イ・ジュホ)教育科学技術相は6日
 「予測される最大の地震と津波に対し、国内の原発は安全に設計、運営されていることを確認した」
と述べた。
 運転を休止していた古里1号機も一部の部品を交換し、安全性が確保されたとして再稼働に踏み切る。

 韓国は1978年に商業運転を始めた古里1号機を皮切りに4カ所で計21基が稼働。福島第1原発の事故後、年数の古い原発に不安を訴える世論が高まり、古里1号機では4月、地元住民が稼働中止を求める仮処分を地方裁判所に申請していた。



『』
朝鮮日報  : 2011/05/06 14:59:12
http://www.chosunonline.com/news/20110506000058

全国で原発の安全強化へ

 先月末に稼働が中断、精密な安全点検が行われている古里原子力発電所1号機が再び稼働する見通しだ。

 教育科学技術部(省に相当)は6日「原子力安全委員会できょう午前、福島第一原発で事故が発生したのを受け、一斉に行われた原発の安全点検の結果と古里原発1号機の安全点検の結果について会議を行った。
 その結果、古里原発の再稼働に何ら問題はないという結論に達した」と発表した。

 同部は原発の安全性を強化する次元で、大々的に安全対策を整備する。



朝鮮日報 : 2011/05/07 08:37:07
http://www.chosunonline.com/news/20110507000008

【社説】原子力安全委員会を1日も早く立ち上げよ

 教育科学技術部(省に相当)の李周浩(イ・ジュホ)長官は6日、
 「電気系統の故障で先月12日に稼働がストップした古里原子力発電所1号機を点検したところ、問題は発見されなかった」
として、再稼働を承認したことを明らかにした。
 同部はさらに、古里原発に今後5年間でおよそ1兆ウォン(約 742億円)の予算を投じ
 ▲防潮堤を高くするなどの補強工事
 ▲移動用の非常発電機確保
 ▲電源が必要ない水素除去装置の原子炉内への設置-
などを行うと発表した。
 防潮堤を高くすれば、原発敷地内にある四つの原子炉全てに設置されている非常用ディーゼル発電機の防水機能を高めることができる。

 しかし、わずか1兆ウォンの追加予算で、原発の安全を本当に確保できるかは疑問だ。
 1000メガワットクラスの標準的な原発1基を建設するには、およそ2兆ウォン(約1500億円)が必要とされているが、日本では福島第一原発の事故による民間への損害賠償額が4兆円に達すると見込まれている。
 つまり、福島第一原発と同じレベルの事故が発生した場合、
 韓国国内にある 21基全てを新たに建設し直すよりも、多くの資金が必要になる
ということだ。
 しかも古里原発からわずか20キロ先には海雲台があり、これは韓国第2の都市、釜山市が目と鼻の先にあることを意味する。
 そのため費用がいくらかかったとしても、経済面より安全面をまずは重視し、完璧な安全対策に向けた投資をより優先しなければならない。

 政府と与党ハンナラ党は3月25日に行った協議で、原子力の安全対策を強化するため、政府とは独立した組織を持つ原子力安全委員会を立ち上げることでいったんは合意した。
 その時点では4月の通常国会で関連法規を定め、7月までには実際に組織を発足させる計画だった。
 ところがその後、政府も与党も法律制定に向けた行動を起こしていない。

 現在の原子力政策は、知識経済部が原子力の利用に関する業務を、教育科学技術部が原子力の振興や安全規制などの業務を並行して手掛けている。
 しかし国際原子力機関(IAEA)は加盟国に対し、原子力の利用、振興、安全規制の業務は、それぞれ別組織を立ち上げて分けて行うよう勧告している。
 安全という観点から原子力を徹底して監視するには、安全の確保がそれ以外の業務から影響を受けてはならず、そのためには独立した別組織がそれぞれの業務を行うことが望ましいからだ。
 わが国でも1日も早く原子力安全委員会を立ち上げ、原子力政策を担当する政府当局の損得勘定に左右されず、原発の安全性と信頼性を高める仕事に徹底して取り組んでいかなければならない。



朝鮮日報  : 2011/05/09 09:25:08
http://www.chosunonline.com/news/20110509000022

古里原発1号機、稼働を再開

 故障で運転を停止していた釜山市機張郡の古里原子力発電所1号機(58万7000キロワット)が、8日午前7時から発電を再開した。

 古里原発1号機は先月12日、電気系統の故障により運転を停止。
 今月6日に韓国政府から稼働再開の承認を受け、準備を始めていた。
 韓国水力原子力の古里原子力本部は再稼働の承認を受けて以降、低温状態(30度)にあった1号機の原子炉の冷却材を高温待機状態(280度)に過熱し始めるなど、段階的に設備を再稼働させ、点検を進めた。

 古里原子力本部側は、1号機の原子炉とタービン発電機の出力を徐々に引き上げ、9日午前10時ごろには出力100%を目指す計画だ。

 古里原発の関係者は
 「原子炉を長期間止めていたため、直ちに電気を生産することはできず、正常稼働には二日ほど要する。
 現在は順調に稼働しており、設備点検と運営結果を引き続き政府に報告している」
と説明した。

 これに先立ち教育科学技術部(省に相当)の李周浩(イ・ジュホ)長官は、6日の記者会見で
 「このところ提起されている原子炉容器の安全性と、先月 12日に発生した故障停止の原因を分析するとともに、後続措置の適切性などについて点検した。
 古里原発1号機の主要機器と設備の安全性が今後の運転に適合し、停止の原因となった一部の部品も交換したため、再稼働しても問題がないことを確認した」
と述べた。





== 東日本大震災 == 



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