2011年4月24日日曜日

今年前半はマイナス成長

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● 共同通信フォト




ウオ-ルストリート・ジャーナル 2011年 4月 23日 6:58 JST
http://jp.wsj.com/Economy/Global-Economy/node_226894

【インタビュー】今年前半はマイナス成長の見通し=白川日銀総裁

 日銀の白川方明総裁は、東日本大震災後の日本経済について、
 今年上半期のマイナス成長を見込む民間予測と同様な見方を示した上、
 景気が一段と悪化する場合には措置を講じると明言した。

 白川総裁はウォール・ストリート・ジャーナル/ダウ・ジョーンズ経済通信との22日のインタビューで、
 「少なくとも、第1、第2四半期の国内総生産(GDP)は減少するとみている」
と語った。

 中央銀行の総裁がこうした予測を示すことはまれで、白川総裁が今年第1-2四半期のマイナス成長見通しを公式に示したのは今回が初めて。
 こうした見方は、民間予測の大勢と一致している。

 内閣府の外郭団体である経済企画協会がまとめた4月の「ESPフォーキャスト調査」によると、今年第1四半期(1-3月期)の実質GDP成長率は43人のエコノミストの予測平均で前期比年率0.22%減、第2四半期(4-6月期)は2.83%減となった。

 白川総裁は、震災後の日本経済が直面する主要な問題はサプライチェーンへの打撃だとの見方を示した。

 総裁は「これが問題の核心だ」と表明し、
 「今回は、需要が蒸発したわけではない。
 供給能力が大きく抑制されているため、潜在的な需要が実現しないということだ」
と続けた。
 さらに総裁は、こうした状況を「深刻なサプライショック」と呼んだ。

 白川総裁は、今夏に予想される
 電力不足も生産面での混乱の長期化につながる
可能性
があると指摘した。

 東日本大震災とそれに伴う津波で東北地方の生産拠点が打撃を受け、自動車から電子機器に至る様々な製品の全国的なサプライチェーン(供給体制)に支障が出ているほか、被災した福島第1原子力発電所の事故で、電力不足が生じている。

 白川総裁は、7月か8月には電力不足が再び悪化する可能性がある、として、サプライチェーンの問題は少なくとも8月まで続く、との見方を示した。

 同総裁は今月上旬には、供給不足が6月か7月に軽減されることを期待すると述べていた。

 日銀は今月28日に開く金融政策決定会合で経済見通しについて協議するとともに、年2回の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を発表する予定で、これには実質GDPの数値予測が含まれる見込み。

 また、白川総裁は、景気見通しの後退を踏まえ、経済状況が悪化する場合には、日銀は一段の緩和措置を講じる用意がある、とした。総裁は、
 「われわれは常に状況を見守っており、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である」
と語った。

 東日本大震災の3日後、日銀は、マインド面の悪化をめぐる懸念を鎮めるため、リスクの高い資産の買い入れを中心に資産買入額を倍増し10兆円とすることを決めた。

 白川総裁は、
 「これは、所期の効果を発揮したと思う」
と表明し、これらの策が今後数カ月間にどのように効果を及ぼすかを注視している、と述べた。

 日銀は過去には、長期にわたるデフレへの対応が効果を発揮していないとして、内外で厳しく批判されてきた。
 しかし、今回は必要な対策を講じているとする一定の評価が聞かれる。

 JPモルガン・チェースの首席エコノミスト、ブルース・カスマン氏(ニューヨーク在勤)は、
 「日本の金融システムが新たな軟調源とならないことを確実にするために必要な策を講じた」
との見方を示した。

 カスマン氏は、過去20年のデフレ対策が十分ではなかった可能性を指摘しながらも、現在の日銀が景気の腰折れ回避に向けて一層の策を講じる必要があるかどうかの判断は時期尚早だと述べた。

 カスマン氏は、
 「流動性という観点から適切な措置が取られた。日銀の追加措置が必要かどうかを判断するには、日本経済がどのような軌道にあるかを見極める必要がある」
と続けた。

 企業や家計の資金需要の大幅増に対する銀行の対応能力をめぐって懸念が強まるなか、日銀は資産購入計画の拡大に加え、金融市場に豊富な流動性を供給している。

 日銀による積極的な資金供給の結果、金融機関の手元資金量を示す日銀当座預金額は3月下旬に42兆円超に達した。
 これは2000年代初期の日銀による量的緩和政策時に記録したこれまでの過去最高額36兆円を大幅に上回る。

 日銀は今回の震災で打撃を受けた被災地の金融機関を対象に、復興支援のための総額1兆円の低利融資制度を創設することを決め、さらに、資金供給を行う際に金融機関から受け取る担保の条件を緩和することも検討し始めている。

 しかし、日本経済に関する不確実性が高いことから、アナリストの多くは日銀が最終的には追加緩和策を取らざるを得なくなるとみている。

 経済協力開発機構(OECD)は今週、日本の経済見通しが悪化する場合には日銀が国債の買い入れ増額などを含む広範な量的緩和措置を導入するなどの一段の措置を取る必要があろう、との見解を示した。

 日銀は現在、市場への資金供給の一環として、月額1兆8000億円規模の長期国債の買い入れを行っている。

 日銀の長期国債保有残高を日銀券発行残高以下に収める「銀行券ルール」の縛りがあるが、日銀の最新データによると、まだ20兆円規模の買い入れ余地が残っている。

記者: MEGUMI FUJIKAWA And TATSUO ITO





ウオールストリート・ジャーナル 2011年 4月 19日 15:23 JST
http://jp.wsj.com/Japan/node_224798

【オピニオン】東電は必要なら破綻も-電力会社は銀行ではない

星岳雄、アニル・カシャップ、ウルリケ・シェーデ
(星岳雄氏とウルリケ・シェーデ氏はカリフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・環太平洋研究大学院教授。
アニル・カシャップ氏はシカゴ大学ブース・ビジネススクール教授)

 福島第1原子力発電所の危機収束に苦闘する日本政府にとって、対応を迫られている課題がもう一つある。
 福島第1や場合によっては他の原発も含む廃炉費用や原発危機の被害者に対する補償費用を東京電力がどのように調達するのかという問題だ。

 東電の株主や債権者は、不透明なコストが巨額に膨れ上がるのを恐れ、神経質になっている。
 報道によると、金融市場の鎮静を図るため日本政府は東電の救済を検討している。だが、それは最悪の選択肢だ。
 むしろ必要とあらば東電を破綻(はたん)に直面させるべきだ。

 報道では、政府が後ろ盾となって保険機構を創設し、機構に補償金と廃炉費用の支払いを肩代わりさせる案が検討されている。
 代わりに東電は政府に優先株を発行し、その配当で長期間かけて政府に返済を行う。

 さらにこの機構は、電力会社から毎年保険料を徴集することで、将来的な原発災害に対する保険の役割も担うという。
 これは、既に米国の規模を上回っている現在の原発事業者向けの民間の強制保険をさらに拡大するものだ。

 報道によると、これは1990年代後半に経営難に陥った銀行の再建に用いられた手法と似ている。
 経営が悪化した銀行は預金保険機構を通じ公的資金を注入される一方、預金の払い出しを保証してもらうことにより経営を安定させた。

 一見したところ、東電と経営難に陥った大手銀行にはいくつか共通点があるようにみえる。
 東電は1998年の一部の銀行と同様に支払い不能に陥る可能性がある。規模も大手行並みに巨大で、経済を機能させるために不可欠であり、たとえ短期間であっても営業を停止させれば、とてつもない金銭的代償が発生する可能性がある。

 だが、共通するのはここまでだ。
 銀行と東電のような企業の間には根本的な違いがある。
 その違いは、預金保険機構のような仕組みの導入は不要であるのみならず、さらなる問題を引き起こす可能性さえあることを示唆している。
 その問題を理解するために、まず銀行には特別待遇が必要な理由を検証していこう。

 銀行がその他の企業と異なる点は3つある。
 1つは、銀行の調達資金は、大半が短期的なものであり、銀行の存続性に対する預金者やその他投資家からの信認が失われればたちまち枯渇してしまう点だ。

 2つ目は、銀行資産の相当部分はすぐに現金化できない融資で構成されている点だ。
 この2つは、投資家が銀行に突然資金の全額返済を求めてきた場合、支払うことができない可能性があること意味する。

 3つ目は、大半の銀行には他の金融機関と交わした未履行の金融契約がある点だ。
 これは、ある銀行で取り付け騒ぎが発生し、支払い不能に陥った場合、その他の銀行に対する債務も履行不能になる可能性があることを意味する。
 そうなれば、その他の銀行でも預金者がパニックを起こし、預金を慌てて引き出そうとする可能性がある。
 こうした危機の飛び火は金融システムの大部分を危険に陥れかねない。

 こうした点において、東電が銀行のように特殊でないことは明らかだ。
 1つ目については、東電の調達資金の大半は長期債券であり、債権者の大半が直ちに返済を要求する仕組みにはなっていない。
 2つ目については、東電には安定的な収益源があり、その金額は比較的容易に推定できる。
 しかも東電は競争にさらされていない地域的独占企業であり、通常の企業以上に収益予想は容易なはずだ。

 したがって、東電が金融債務の返済に十分な収益を得られるかどうかを見極めるのは簡単だ。
 会社更正法に基づく通常の破綻処理では、それを見極めた上で必要に応じて債務を再編する。
 破産手続きが必要だと判断されても、企業は営業を続けたまま何の問題もなく手続きを進めることができる。

 しかも、東電の破産によって他の電力会社が危機に陥ることはない。
 それどころか、顧客による電力会社の乗り換えが可能であれば、他の電力会社はむしろ得をすることになる(ただし、これには現行法の改正が必要)。

 電力会社が破綻しても、銀行破綻のときのようにシステム全体を機能不全の危機に陥れることもない。
 東電の債務を保有する金融機関が債務の棒引きを迫られる事態になった場合は、東電を下支えするのではなく、それら企業が監督することで直接問題を処理させるようにすべきだ。

 東電を通常の破綻処理から免責しようとすれば、別の新たな問題が発生する可能性がある。
 これについては預金保険機構の例から学ぶべきことがある。

 政策当局は長年、預金保険を与えることで銀行を保護したために、銀行経営者は手堅い経営を、預金者は銀行に対する監視をそれぞれ怠ることになり、モラルハザード(倫理の崩壊)を招く結果になったと考えてきた。
 これを是正するため、銀行規制は強化され、無謀な経営は抑制されている。

 政策当局は、東電は地域的独占企業であり、その業務の性質上、危険な各種のモラルハザードを引き起こす可能性があると考えた。
 そのため特別な規制を設けることでそれを防ごうとした。
 だが、その規制はうまく機能しなかった。

 今ここで東電に特別な保険を提供すれば、安全性と効率の向上を求める市場のプレッシャーから東電をさらに隔離することになる。

 日本政府は、東電を銀行ではなく、元世界最大手のエネルギー取引会社、米エンロンと同様に考えるべきだ。
 エンロンは誤った経営判断で会社を危険に陥れ、その結果破綻に追い込まれたことで知られている。
 同社の破綻は混乱を引き起こしたが、システム全体を不安定化させることはなかった。

 東電は重要な日本企業だ。
 だが、通常の企業に課された法律を免れるほど重要ではない。





== 東日本大震災 == 



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