2011年4月23日土曜日

まず、逃げろ

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● カテゴリーI(海溝型地震のうち震源断層を特定できる地震)の長期評価結果の概要。
 地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図(2010年版)」より転載。




プレジデントロイター 2011年 4月 21日
http://president.jp.reuters.com/article/2011/04/21/ABBB6B48-65BB-11E0-A78C-C0093F99CD51.php

大地震、大津波…「60秒サバイバル」入門
プレジデント 2011年4.18号

 「世界一の津波構造物といわれた釜石の防波堤でさえ一気に破壊された。
 ハザードマップなど、シナリオ想定に基づく防災対応には限界がある」

 国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の大地震。
 激しい揺れの後、最高10m以上の津波が押し寄せた。
 災害から身を守るためには、どうすればいいのか。
 第一には「逃げるが勝ち」という心構えを持つことだ。

 3月11日14時46分、三陸沖で「東北地方太平洋沖地震」が起きた。
 地震の規模を示すマグニチュードは9.0。
 国内観測史上最大で、アメリカ地質調査所によれば世界でも4番目に大きい地震だった。
 宮城県栗原市では震度7を観測。
 震度7の観測は2004年の新潟県中越地震以来、7年ぶりである。

 この地震では太平洋沿岸部に最高10メートル以上とみられる国内最大級の津波が押し寄せ、特に岩手・宮城・福島の各県では甚大な被害が出た。
 警察庁によると、死者9079人、行方不明者1万2782人(3月22日現在)。
 約31万人が避難生活を強いられている。
 日を追うごとに、被害の全容が明らかになりつつある。

 さらに地震と津波の影響から、東京電力・福島第一原子力発電所が、放射能漏れ事故を起こしている。
 政府は、福島第一・第二原子力発電所の周辺住民に対し避難指示を発令。
 原発が操業停止となった影響で電力需給が逼迫。
 東京電力は管内で計画停電を実施している。

 今回の震災は、これまでの「被害想定」を根本から覆すものだった。
 たとえば三陸海岸は、1896年の明治三陸地震、1933年の昭和三陸地震、そして60年のチリ地震津波と、たびたび津波の被害を受けており、それぞれの港には世界有数の防波堤がつくられていた。

 釜石港の防波堤は63メートルと世界最深で、マグニチュード8.5の明治三陸地震の揺れや津波にも耐えられるとして09年に完成したばかりだった。
 宮古市田老には総延長1350メートル、高さ10メートルの防潮堤が備えられ、地元では「万里の長城」と呼ばれていた。
 しかし、そのいずれもが今回の津波で破壊された。

 津波被害が甚大だった宮城県・南三陸町では、3月20日現在で約1000の遺体が見つかっているが、町民1万7600人の約半数にあたる8000人がいまだに行方不明だ。
 しかも庁舎全体が壊滅し、仙台法務局気仙沼支局(気仙沼市)の保存データも喪失したことから、戸籍データそのものが完全消滅した恐れもある。

 南三陸町の庁舎は、チリ地震津波を教訓にした鉄筋3階建ての防災対策庁舎だった。
 高さは約11メートル。
 ところが津波の警報を聞き、約30人の職員と庁舎屋上に上がった佐藤仁町長は、まもなく津波にのみ込まれた。
 佐藤町長は記者会見でこう振り返った。

 「庁舎近くの住宅から、職員の妻が流されていくのが見えた。
 津波は何度も何度も襲ってきた
 俺たちだけでも助かるぞ、と職員を鼓舞した。
 波が収まってからはネクタイを燃やして暖を取った。
 生き残った私たちは、つらくてもしっかり生きなければならない」

 震災について釜石市で実態調査を進める群馬大学の片田敏孝教授は
 「従来の防災は被害想定に縛られていた」
という。

 「世界一の津波構造物といわれた釜石の防波堤でさえ一気に破壊された。
 ハザードマップなど、シナリオ想定に基づく防災対応には限界がある。
 これまでの防災は災害後の迅速な救援・復旧に力点が置かれていたが、想定を上回る事態は必ず起きる。
 『備える防災』だけでは限界がある。
 これからは
 『人を死なせない防災』
 を前提に、避難対策へ力を入れるべきだろう」

 実際に釜石市では避難訓練の徹底により、市内の小中学校全14校の児童・生徒約3000人のほぼ全員が無事だった。
 釜石市の人口は約3万9000 人。
 3月20日午前10時現在で、死者493人、行方不明者620人と報じられている。
 地震発生時、児童・生徒らは下校の直前で教室にいた。
 このため警報と同時に集団で行動を開始。
 あらかじめ決めていた近くの高台に避難した。片田教授はいう。

 「どこにいても災害からは無縁ではない。
 残念ながら、住民の危機意識は防災施設が整うほど下がる傾向がある。
 多くの災害では避難が迅速ならば命は守れる。
 人間には『自分は助かるだろう』とリスク情報を軽んじる傾向がある。
 そうした『情報理解の非対称性』を踏まえたうえで、防災対策をやり直す必要がある」

 震災前に『津波災害』(岩波新書)を上梓し、津波への警鐘を鳴らしていた関西大学・河田惠昭教授は
 「そもそも堤防はそこに来る津波を想定し、つくられてはいない」
と話す。

 「10メートルを超える高さの津波は、どのような海岸護岸や堤防も乗り越えてしまう。
 大津波警報(高さ3メートル以上の津波)が発令されたら、まずは避難することだ。
 そうすれば、命は助かる」

 しかし、最近の津波災害では住民の避難率の低さが問題視されてきた。
 消防庁によると、10年2月のチリ沖で起きた地震津波では、168万人に避難指示や勧告が出されたが、このうち市町村が避難を確認できた住民は6万3000人で、避難率はわずか3.8%だった。
 しかも避難率は年々低くなっている。

 河田教授はこうした傾向を憂慮し、
 「再び三陸地域に大津波が来れば、万を超える犠牲者が出る恐れもある」
と危機感を募らせていた。
 それがついに現実のものとなってしまった。


■首都直下地震が起きれば3万人以上が死亡の恐れ

 こうした津波が首都圏を襲うこともあるのだろうか。
 河田教授は「首都圏に関しては今回のような心配はない
と話す。

 「東京湾は浅いため、動く海水量が少ない。
 津波の高さは1メートル程度にとどまる。
 湾岸には3メートルの高潮対策が施されており、津波被害の恐れはない

 その一方で、首都直下地震が起きる可能性は依然として残されている。
 内閣府の中央防災会議は、今後30年以内に70%の確率でM7クラスの首都直下地震が起きると予想している。

 関西大学・河田惠昭教授は、首都圏で直下地震(M7.3の東京湾北部地震を想定)が起きた場合の被害についてシミュレーションを行っている。
 それによれば、首都圏被災地人口2400万人超の0.1%にあたる3万人以上に死亡の危険があり、避難者数は700万人、避難所生活者は460万人、疎開者数は 250万人に上る。

 さらに河田教授が警鐘を鳴らすのが「複合災害」の危険性だ。
 複合災害とは震災と浸水などがからみあって発生する事態をさす。
 江戸時代には、1855 年の安政地震が起きてから、翌56年に安政暴風雨が発生。
 被害が拡大した。
 利根川も荒川も現行の治水施設群では、200年に一度の確率の豪雨には耐えられない。
 地震で被災していればさらに危険性は高まる。
 河田教授は、
 「首都圏への一極集中が進んでいる
 今後、市街地で氾濫が起これば、間違いなく未曾有の被害が発生する
という。

 「首都壊滅」の事態となれば、影響は甚大だ。
 災害心理学を研究している新潟青陵大学の碓井真史教授は、
 「復興の拠点の有無が重要だ」
という。

 「阪神・淡路大震災では、大阪という拠点が近隣にあったため、復興がスムーズに進んだ。
 今回の大震災では、東北の拠点となる仙台が被災しており、影響が懸念される。
 もし首都圏が被災することがあれば、苛立ちや不安は全国に波及する」

■富士山噴火とは無関係も東海地震では誘発か

 図版は地震調査研究推進本部による地震の予測だ。
 たとえばM7.5前後の「宮城県沖地震」は、今回の地震とは別に、今後30年以内に99%の確率で起きると予想されている。
 またそれぞれ連動の恐れがある東海・東南海・南海地震も、今後30年以内に87~60%の確率で起きるという。
 
 地球科学に詳しい京都大学の鎌田浩毅教授はいう。
 「今回の地震はまったく想定外の規模。
 M9クラスの発生で、東北や首都圏を含む北米プレート全体が活動期に入った。
 長野、秋田、静岡での比較的大きな地震は、この影響だ。
 今後1年程度はM七クラスを上限に内陸型地震が誘発される」

 3月15日には富士山に比較的近い場所で、M6.4の地震が起きた。
 日本最大の活火山である富士山は、1707年の宝永大噴火以来、300年以上も大規模な火山活動を停止しており、噴火の可能性が指摘されている。

 鎌田教授はいう。
 「今回は北米プレートでの地震なので富士山とは関係ない。
 注意が必要なのは、山形の蔵王火山や福島の吾妻火山など東日本の活火山。
 富士山噴火の関連性があるとすれば、東海・東南海・南海地震だ。
 これらは複合発生する恐れがある」


 「東京湾は浅いため、動く海水量が少ない。
 津波の高さは1メートル程度にとどまる。
 湾岸には3メートルの高潮対策が施されており、津波被害の恐れはない
 これよくわからない。
 東京湾の中で地震が起こるのならそうだろう。
 でも太平洋の向こうから津波はやってくる。

 東京湾入り口で10mの高さの津波が来るとどうなる。
 これが繰り返し襲ってくると、房総半島、三浦半島の湾岸を洗い東京をめざすことになる。
 高さは低まるが、底が浅いので逆に水の引きがわるくなり、防潮堤と半島周辺を縁とする皿に押し込められた形で貯まることにならないか。
 とすれば、繰り返しによって防潮堤を越えると逆に、防潮堤が引潮を拒むため、ちょうどニューオリンズのように東京が水没する可能性もある。
 そういうことは考えられない、想定できない、ともいえるかもしれないが、その想定できない地震津波が起きたのが今回の東日本大震災である。
 想定外というのは、「起こりうる」ということでもある。
 辛口で言えば、この説の納得して
 東京に津波は来ない、東京は水没しない、
なんでことは考えない方がいい。
 生きていたいのならば。
 「まず、逃げろ」
 どこへ、3階なら絶対安全。
 あふれる水は津波のような力はない。
 ただヒタヒタと足もとから水が上がってくるだけ。
 ゼロメートル地帯を除いて、せいぜい数十センチでマックスだろう。
 問題は、水が引かないことだ。
 これがネックになる。
 


住宅最前線 こだわリポート 2011/4/21 提供:RBAタイムズWeb版
http://sumai.nikkei.co.jp/edit/rba/etc/detail/MMSUa8000022042011/

やはりマンションは地震に強かった 管理協の調査で証明

 やっぱりマンションは地震に強かった――。
 高層住宅管理業協会(理事長:黒住昌昭大京アステージ会長)は4月21日、同協会の会員会社が管理するマンションの東日本大震災による被災状況調査結果をまとめ発表したが、4月1日に公表した目視調査と同様、建物の全壊や建替えが必要な「大破」はゼロだった。

 調査結果によると、東北6県で会員会社25社がマンションの管理を受託する1642棟(全マンションに占める割合は約 90%)のうち、「倒壊」や「大破」はゼロで、構造体の補強や修理が必要な「中破」は26棟(1.6%)、構造耐力に支障はないが補修工事が必要な「小破」は283棟(17.2%)、外見上ほとんど損傷がない「軽微」が1024棟(62.4%)、「被害なし」が309棟(18.8%)だった。

 ただ、同協会に調査依頼があった79棟の詳細調査では、1棟(具体的な内容は未公表)が300分の1度くらい傾いているものがあったため、更に詳細な調査が必要としている。

 被害を耐震基準別に見ると、
 「旧耐震(1970年以前)」は3棟あり、全て「小破」だった。
 「移行期(1971~1981 年)」は79棟あり、「中破」が5棟(6.3%)、「小破」が27棟(34.2%)、「軽微・損傷なし」が47棟(59.5%)。
 「新耐震(1981年以降)」は1,560棟で、「中破」が21棟(1.3%)、「小破」が253棟(16.2%)、「軽微・損傷なし」が1286棟(82.4%)だった。

 1995年の直下型で最大震度7を記録した「阪神・淡路」では全5261棟の1.6%に当たる83棟が「大破」した。
 が、耐震基準別では
 「旧耐震」が31棟(全旧耐震に占める割合8.4%)、
 「移行期」が42棟(全移行期に占める割合2.3%)、
 「新耐震」が10棟(全新耐震に占める割合0.3%)
だった。
 倒壊マンションも少なくなく、1階部分が完全に潰れたものや、真横に倒れたものもあった。

 調査結果について黒住理事長は、「宮城沖地震(1979年)の学習効果があったことだろう。ライフラインの問題はあるが、少なくとも生命を守る安全性が実証された」と評価した。

◇     ◆     ◇

 記者もこの結果に安堵した。
 4月1日時点の調査は「目視」で、専門家の調査ではないものも一部含まれるということだったので不安だった。
 その後、ある新聞が「仙台のマンションも大きな被害」と報じたので、管理協の調査もいい加減だったのかと疑問を抱いていた。

 しかし、そうではなかった。
 関係者によると、地元の新聞などが報じた物件は、賃貸用マンションを分譲に切り替えたもので、
 「安普請だったのではないか」
ということだし、あとは公営住宅や公団マンションなどのようだ。
 つまり、大きな被害を受けたマンションは、管理協が管理しているマンションではないということが分かった。

 地震の被害の大きさは「震度」とはまた別だから「絶対」とは言い切れないが、少なくとも「震度6~7」では新耐震のマンションは倒壊も大破もせず、人的被害を最小限に抑えられるということが改めて証明されたのではないか。

 震災からわずか40日間足らずで1642棟を調査した管理協関係者の努力を称えたいし、デベロッパーも含めてだが、これからも「管理協が管理するマンションは地震に強い」と言われるようなしっかりした受託・管理を行って欲しい。








== 東日本大震災 == 



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