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BPnet 2011年04月22日
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110421/267785/?top_rec
水素爆発の防止と汚染水処理、ロボットも投入
東京電力は4月17日、福島第一原子力発電所の事故収束への工程表を発表した。
原子炉と使用済み燃料プールを安定的に冷却し、放射性物質の放出を抑えるため、期間を2段階にわけて取り組むとしている。
■水素爆発の防止と汚染水処理が優先課題
今後3カ月程度かかるステップ1では、放射性物質の放出を着実に減少させることを目標にした。
その後、さらに3~6カ月程度で、原子炉の温度を100度以下に安定させる「冷温停止」状態に持っていき、放射性物質の放出を大幅に抑えるという。
(上の図、工程表を参照)。
この二つのステップを実現するため、優先的に取り組まなければならないのが、1~3号機の格納容器で水素爆発が起こるのを防止すること、そして2号機のタービン建屋などにたまっている放射線レベルの高い汚染水が敷地外へ流出するのを防ぐことだ。
1、3号機では3月25日から、2号機では3月26日から圧力容器に真水を注入し、冷却作業を行っている。
いずれの炉心でも燃料棒が水面から露出しており、燃料棒の被覆管に使われているジルコニウム合金は1200度を超えると水と反応して水素ガスを発生させる。
水素ガスは圧力容器から格納容器へ漏れていると見られ、水素ガスの濃度が4%を超えると格納容器で水素爆発の起こる可能性が高くなる。
水素爆発が最も懸念されるのは1号機だ。
燃料棒の損傷は70%とされ、圧力容器の温度も他に比べて高い。
一時期より温度が下がったものの、圧力容器の給水ノズル温度は154.1度(4月20日、13時時点)。
これに対して、2号機は同134.7度、3号機は同100.2度と低めだ。
こうした傾向は以前から続いており、米原子力規制委員会(NRC)の助言を受け、4月11日から1号機の格納容器に窒素ガスを注入し、水素ガス濃度を下げている。
今後、2、3号機でも窒素ガスの注入を行う予定だ。
■仏アレバ社の汚染水処理に期待
もう一つの優先課題である高濃度汚染水は2号機で発生している。
3月15日に爆発音が確認され、格納容器の下部にある圧力抑制室が損傷した。
この損傷部から漏れ出した高濃度汚染水がタービン建屋や坑道(トレンチ)にたまり、さらに4月2日になって取水口近くのピット側面から流出したことが大きな問題になった。
その放射線量は毎時1000ミリシーベルトを超える高レベルのものだった。
ピット内に高分子吸収材などを詰めて流出をようやく止めたのが6日。
この間に海へ流れ出た放射性物質の総量は「4700兆ベクレルと推定される」と東京電力は21日に発表した。
2号機には2万5000トンもの高濃度汚染水がたまっている。
このうち約1万トンを集中廃棄物処理施設へ移送する作業が19日に始まった。
しかし、同施設にも容量の限界がある。
汚染水を処理して冷却用に再利用できれば事態はかなり改善される。
そこで期待されているのがフランス原子力大手アレバ社の技術だ。
アンヌ・ロベルジョン最高経営責任者(CEO)は19日に都内で会見し、高濃度汚染水を処理する除染システムを5月末に稼働させる考えを明らかにした。
すでに自社工場で導入している「凝縮沈殿法」という除染技術も用い、1時間当たり約 50トンの汚染水を処理する計画。
汚染の度合いは1000分の1から1万分の1にできるという。
■高い放射線量のため作業が難航する恐れも
アレバ社の除染システムが無事に稼働すれば、汚染水を処理して再び冷却水として利用する道が開け、炉心の冷却に効果を上げるだろう。
しかも、工程表では高濃度汚染水の処理はステップ2で予定されているため、計画が前倒しで実行されることになる。
しかし、クリアしなければならない別の課題がある。
除染で得られた冷却水を格納容器内で循環させるには、圧力抑制室の損傷部を補修しておく必要があるのだ。
粘着質のセメントを充填するなどの案が候補に挙がっているが、放射線量の高い建屋内で、確実に損傷部を密封するのは、かなりの困難が伴う作業と言える。
またステップ2では、応急措置として、大きく破損した原子炉建屋(1、3、4号機)をカバーで覆い、放射性物質の飛散を防ぐとしている。
これも同様に、放射線量が高いままだと作業が難航するのは必至。
したがって、それまでに放射性物質の放出を大幅に削減しておくことが前提になる。
このように工程表を実現するには難題が数多くある。
「あくまで計画」といったさめた見方や実現を疑問視する声も少なくない。
だが、工程表をもとに、より具体的な実行計画を立てて一歩ずつ前進していく以外に方法はない。
■原子炉建屋内に初めて入ったのは「軍事ロボット」
東電によると、1号機の原子炉建屋内は放射線量が毎時270ミリシーベルトと高いことが16日にわかった。
2号機は毎時12ミリシーベルト、3号機は毎時10ミリシーベルトだった。
作業員の被曝(ひばく)限度は最大250ミリシーベルトに引き上げられているが、それでも作業ができる時間は大幅に制限される。
これまで作業員が近づけなかった原子炉建屋内部に、遠隔操作ロボットが17日(1、3号機)と18日(2号機)に初めて入った。
米アイロボット社(マサチューセッツ州)が開発した軍事用の「パックボット」だ。
これまでイラクやアフガニスタンなどの紛争地域で爆発物処理などに使われているという。
1.8メートルの高さからコンクリートの地面に落としても壊れないほど頑丈に作られている。
投入されたのは2台。
ロボットには放射線量、温度、湿度、酸素濃度を計測するセンターが搭載され、もう一方に取り付けたカメラでそれらのデータを読み取る。
ものをつかむアームを装備しており、扉のハンドルを回転させてロックを外してから、扉を押して建屋内部に入った。
リチウムイオン電池で約4時間稼働し、800メートル離れたところからコントローラーで操作できる。
これ以外にも、がれき除去用に「ウォリアー」という遠隔操作ロボットも2台提供されている。
最大100キロの重さのがれきを処理できるという。
● 3号機の原子炉建屋1階
● 2号機の原子炉建屋1階
● 1号機の原子炉建屋1階 (撮影は3点とも東京電力)
● 3号機の原子炉建屋に入る「パックボット」 (撮影は3点とも東京電力)
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ウオールストリート・ジャーナル * 2011/4/22 8:12
http://jp.wsj.com/japanrealtime/2011/04/22/%E5%8C%96%E5%AD%A6%E8%80%85%E3%81%8C%E3%80%8C%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AE%E6%B1%9A%E6%9F%93%E6%B0%B4%E3%82%92%E6%B5%84%E5%8C%96%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E7%B2%89%E6%9C%AB%E3%82%92/
化学者が「福島原発の汚染水を浄化できる粉末を開発」
仏原子力大手アレバが福島第1原子力発電所の放射性物質を含む汚染水の処理システムを提供することになり、これまで復旧作業の妨げとなっていた問題の解消が見込まれる。
しかし、ある日本の化学者は、汚染水の除染が可能とされる粉末を1カ月足らずで開発したと発表。
この粉末を使った場合、アレバのシステムより 20倍早く除染できる可能性があり、そうなれば、最終的な目標である原子炉の安定的冷温停止に向けた作業が大幅に加速する。
● Nuclear and Industrial Safety Agency/Reuters
汚染水の水位を示す防護服を着た作業員
この粉末を開発したのは金沢大学の太田富久教授。
同教授によると、天然の鉱物と化学物質を混合した白い粉末は、汚染水に溶けた放射性物質を捕まえて沈殿させるという。
1000トンの汚染水の場合では1時間で処理できる。
一方、アレバの処理システムによる放射性物質の除去は1時間当たり50トンの汚染水。
● Courtesy of Tomihisa Ohta
太田富久教授とクマケン工業が開発した粉末
● Courtesy of Tomihisa Ohta
除染実験のために用意されたヨウ素とセシウムの混ざった水
● Courtesy of Tomihisa Ohta
粉末をかき混ぜて10分。セシウムとヨウ素がビーカーの底に沈殿
太田教授は20日のインタビューで、沈殿のスピードが全く違うので、非常に早い処理ができる方法だと語った。
この技術は汚染処理を専門とするクマケン工業(秋田県)と共同で開発されたものだ。
同社は2008年以来、太田教授の開発した粉末を利用している。
太田教授は1週間ほど前、この放射性物質除去粉末の開発を完了した際、東電と政府に連絡し、現在も協議が続いているという。
この件に関して東電と政府のいずれからもコメントは得られなかった。
同教授はアレバのシステムとの差について、化学構造の違いを理由に挙げているが、アレバによる処理について詳細を得ていないことから、それ以上の推測はできないとしている。
同教授の技術は実験段階では実証済みであるが、実際に工業応用として利用されたことはない。
太田教授の技術では、汚染水中の放射性物質は粉末に吸着された後に沈殿していく。
そして濁った部分の放射性物質は水と分離し、容器の底に堆積する。
分離した上澄み水は透明だ。
実験では、放射性ではないセシウムを1~10ppmの濃度で溶かした水100ミリリットルに粉末を1.5グラムを入れた。
(福島第1原発での放射性物質の濃度は約10ppm。太田教授の開発した粉末は100ppmの濃度まで処理可能だという。)
同教授によると、この浄化処理は 10分で完了した。
さらに数千トンの水を同時に処理する場合でも10分を大幅に超えることはないということだ。
太田教授は、放射物質をほぼ100%除去できると見ている。
太田教授の考えでは、アレバが採用したような汚染水処理施設が数カ所建設され次第、今回開発された粉末はすぐにでも福島原発での汚染水処理に利用できる可能性がある。
実験では放射性物質が使われなかったが、化学的な性質は同じなので、実際に放射性物質の除去に使われた場合でも同じ結果が出ると、同教授は胸を張る。
この粉末の開発期間は1カ月足らずと非常早かった。
ベースとなったのは、通常は工場付近で見つかる産業汚染物や金属汚染物の混じった汚染水を除染するために開発された類似粉末だ。
太田教授はこの凝集剤の考案を6年前に始めた。
マグネシウム、鉄、コバルトなどの重金属向けであったため、その化学成分は、放射性同位体のヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムにも応用できた。
そして、同教授はこの凝集剤を微調整して今回発表した粉末を開発した。
同教授は特許を理由に、正確な配合について開示しなかったが、原料は簡単に手に入リ、また供給量も豊富であると述べた。
太田教授はこれまで天然物質と環境汚染を専門に取り組んできたため、開発した製品が原発汚染で活用できるとは思っていなかったと語った。
記者: Yoree Koh
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== 東日本大震災 ==
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