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● FoxNewsが「shibuya eggman」を原発と間違って紹介した(のは有名な話だ)。
(画面はMedia Matters for Americaより引用)
『
COMPUTERWORLD.jp 2011年04月11日
http://www.computerworld.jp/topics/2011shinsai/191226-1.html
第1回 英国人記者が見た震災の爪痕とITの可能性
IT機器部品製造工場が集中するTOHOKUで起こったこと
■半導体用シリコンウエハ工場が集中する東北地方は…
東日本を襲った大震災から早1カ月。その被害状況が明らかになるにつれ、改めて今回の震災が残した爪痕のすさまじさに呆然する。
さらに福島第1原子力発電所からの放射性物質の漏洩で、その被害はさらに拡大することが懸念されている。
私が来日したのは1995年。
地下鉄サリン事件の2日前、阪神淡路大震災の2カ月後だった。
以来、IT分野を中心に日本のIT産業に関する記事やその動向を世界に配信している。
今回の東北地方取材の目的は、同地方にあるIT関連施設の被害状況を知ることはもちろんだが、地震や津波、そして福島第一原子力発電所からの放射性物質の漏洩が、人々の生活にどのような影響を与えているかを知ることだ。
東北地方にはソニーの仙台テクノロジーセンター(宮城県多賀城市)やパナソニックAVCネットワークス社仙台工場(宮城県名取市)をはじめ、DRAMベンダーのエルピーダメモリ、信越化学工業、SUMCOなどが工場を構えている。
同地方に半導体用シリコンウエハ工場が集中していることは世界的に有名だ。
すでに米国のシンクタンクや調査会社は震災によるインパクトを試算しているが、その見通しは明るいものではない。
話が少し前後するが、地震当日の話をしよう。
私は東京港区(泉岳寺)のオフィスで台湾や米国から来日していた同僚とミーティングをしていた。
地震発生直後から日本の報道から得た情報を海外向け発信していたが、(ほかの日本人同僚と同様に)ここまで深刻な被害が発生している(そして現在も継続している)とは想像していなかった。
● 陸前高田市にある竹駒駅。海から5km近く内陸にあるが駅舎も外壁を残し屋根もろとも津波に流されていた
■ 壁にめり込む車で、津波の脅威を理解する…
今回の取材は3月31日~4月4日の4日間の日程で、山形市をベースに多賀城市、仙台市、石巻市、陸前高田市、大船渡市、福島市を一人で回った。
取材にあたり特別に準備したものは、水(2リットル×6本)とガソリンだけである。
ガソリンの調達問題を考えてハイブリッド車のプリウスをレンタルしたかったが、すでに貸し出し中だったので、小型で燃費のよいマツダの「デミオ」を調達した。
山形市のホテルに問い合わせたところ、同市内では生活に必要な物資はほぼ入手可能とのこと。
東京では水やトイレットペーパーの買い占めが発生していただけに、この返事には正直拍子抜けした。
● 4日間の取材で走行距離は1,795km。道路の脇は瓦礫だらけ、信号も停電で機能していない地域が多かったが、ドライバーは譲り合って運転していたのが印象的だった
東京から車で約6~7時間で山形市に到着した。
そこから最初に訪れたのは宮城県多賀城市にあるソニーの仙台テクノロジーセンターだ。
同センターは、磁気テープやブルーレイ・ディスクなどを生産している。
同センターも津波による深刻な被害を受けていた。
今回センターの中に入ることは許可されなかったが、センターの外側からでも中の被害の状況が伺えた。
正門の外には津波の力を象徴するかのように木材、プラスチック、金属片が散らばっており、それらが歩道をブロックしている状態だ。
一階部分は完全に破損しており、柱だけが残っている。
漁港で競りが行われる場所のように壁がない。
センターの裏道路は、ソニーのロゴやラベルが貼ってある機器や試験機器の一部品のような金属片が散乱しているが、これがどこからやってきたのかを判断することはできない。
同センターは、海から1.5Kmも内陸にある。それにもかかわらず同センターの一階部分は完全に水に浸かってしまった。
ソニーのスポークス・パーソンであるSue Tanaka氏は
、「同センターで生産を再開するまでどのくらいの時間を要するのか、見当がつかない」
と話す。
また、センター周辺には津波によって流されてきた自動車(軽自動車からトラック、大型バスにいたるまで)が、あらゆる方向を向いて散らばっている。
フェンスや電柱にめり込んだ車も多く、これらを撤去するにはかなりの時間がかかることは間違いない。
ソニーは4月6日、地震や津波、停電の影響による生産活動の状況を発表した。
それによると、福島県郡山市や本宮市、白石市にある工場は一部生産を再開しているが、仙台テクノロジーセンターは 「設備清掃及び損傷調査中」であるとして、生産再開のメドは立っていないようだ。
●センター付近に限らず町のいたるところで壁にめり込んだ自動車が見られた
■インターネットと紙伝言板の“ハイブリッド”でネットリテラシーを克服
次に向かったのは仙台市宮城野区高砂地域にある「高砂デイサービスセンター」である。
ここではインテルとUQコミュニケーションズ、そしてダイワボウ情報システムの3社が協同で「WiMAX被災地支援プログラム」を展開している。
同プログラムは被災地や避難所などに3社が協同でノートPCとWiMAX端末と回線を無償で提供するというものだ。
3社の共同リリースによると、3月22日から仙台市および名取市の9個所にインターネットに接続可能なノートPCを提供したという。
東京で地震に関する情報収集に役立ったのは、インターネットである。電車情報や地震速報、各地域の情報などは、Twitterなどを利用すればかなりの情報が収集できる。
しかし、被災地――特に被害の大きかった地域――ではコンピュータを利用できる環境が極端に少ない。
多くの避難所での情報源はテレビ(NHK)やラジオである。
震災発生直後にGoogleが「Person Finder(消息情報)」を立ち上げていたが、それがコンピュータの少ない地区でどのくらい役立っているのか――。
その答えのヒントとなったのが、WiMAX被災地支援プログラムで設置されたPCの利用方法だった。
基本的にPCは1個所の施設に1台しか設置されていない。
そのため被災者はPCを自由に利用できない。
米国Nielsenの調査によると、2011年2月におけるmixiの平均利用時間は 140分。
それでなくてもオンラインゲームをやり出す人がいれば、それだけで「ネットインフラ」は利用できなくなってしまう。
しかし、そんな懸念はまったく必要がなかった。利用者は手際よく「Person Finder」や検索サイトにアクセスし、必要な情報だけを引き出していく。もちろん、ネットサーフィンしたりゲームをしたりするような人は皆無だった。
もう1つ感心したのは、PC操作に不慣れな高齢者に代わって、小学生や中学生がボランティアでインターネット検索代行を行っていたことである。
そのシステムは、インターネットを利用して調べて欲しいことを書いて「質問回収ボックス」入れておくと、小学生や中学生がインターネットで検索し、その結果をメモに書いて掲示板に貼っておくというものだ。
同システムは自然発生的に“運用”が開始されたという。
● Q and Aボード。
「ハローワークはいつからやりますか」
「多賀城から仙台までの交通手段はありますか」
といった質問にも丁寧に回答していた
「『給水車はどこにいるのか、○○地区のガスはいつごろ通るのか、ガソリンはどこで何リットル入手できるのか』といった質問が多いです。
PC台数が限られているので、みんなが一番知りたいことを優先的に調べて貼り出すようにしています」(ボランティアの中学生)
余談だが、小学生のPCリテラシーは大人が考えているよりもはるかに高い。
今回PC設置作業に同行させてもらった際、インテルやUQコミュニケーションズの社員がインターネットのスタートページを「Yahoo!きっず」に設定しようとしたところ、設置作業を“監視”していた小学生から「通常のYahoo!ページにして」というリクエストが飛んだ。
* * *
仙台市を取材して感じたのは、インターネットから得られる情報は、水やガソリンと同じくらい重要であるということだ。
今回、先述のPerson FinderやTwitterでは必要な情報が早い段階から収集され共有(公開)された。
しかし、これらの情報は
「インターネットにアクセスできること」
が大前提である。
被害が大きい地域ではインターネットにアクセスするまでにかなりの時間を要する。
今後は
「被災者が今欲しい情報に、どうすればいち早くアクセスできるようにするか」
が課題となるだろう。
実際に「東京で知りたい情報」と「被災者が避難所で今知りたい情報」には乖離がある。
そして、残念ながらインターネットで発信される情報は、その利用者が多い地域――つまり東京など被災地以外――の人々が欲しい情報に集中しがちである。
今回、筆者が見た範囲で感じたのは、被災地で一番役に立っていたのは、掲示板に張り出されたメモだった。
多くの人々は
「○○の避難所にある掲示板に書いてあった」
という情報を頼りに、避難所生活を送っていた。
こうした状況の中で、ITがどのように役に立てるのか、考える必要があるだろう。
次回はさらに津波の被害が大きかった陸前高田市の様子と、東京電力福島第1原子力発電所の事故に関する報道について報告したい。
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COMPUTERWORLD.jp 2011年04月19日
http://www.computerworld.jp/topics/2011shinsai/191321.html
第2回 英国人記者が見た避難騒動と震災報道の温度差
「だれが正確な情報を発信しているのか」に振り回された1カ月
東日本大震災は地震と津波の被害だけでなく、原子力発電所の事故による放射性物質の漏洩、さらにはそれに伴う電力不足も引き起こした。
今回は原発事故に関する1カ月間の報道を通じて、私が感じたことを紹介したい。
リポート/Martyn Williams(IDG News Service東京支局)、構成/Computerworld編集部
■東京から“ガイジン”が消えた
私はこの1カ月間、多くの日本人の知人から
「逃げなかったのか?」
「まだ日本にいるのか?」
と聞かれ続けた。
この類の質問には、
「多くの外国人はとっくに避難しているのに、なぜ君は…」
という前置きが隠されている。
多くの外資系企業では、原発事故が明らかになった段階で、社員(特に外国人)に対して避難勧告を出した。
例えば米国のある大手テレビ局は、東京のオフィス機能をすぐさま大阪に移した。
また米国系の経済専門報道機関は、日本人社員以外、ほぼ全員が日本から出国した。
さらに東京千代田区にある外資系高級ホテルは、3月17日から4月14日まで休業していた。
こうした動きには、外国人幹部が率先して避難したことも背景にあったようだ。
かばうわけではないが、彼らの行動も理解できる。
外国で報道された今回の震災は、あまりにも悲惨な内容が多かった。
私の知人(外国人)には
「東京を離れたら仕事にならないが、家族や本国の友人に懇願されたので、とりあえず避難する」
という者が多かった。
震災直後に東京から避難した人々は現在、徐々に戻ってきているようだ。
読売新聞の報道によると、米国国務省は4月14日、原発事故後、名古屋より東側で働く大使館員や政府職員の家族を対象に発令してきた自主的な国外避難勧告を、解除すると発表したという。
しかし、状況は好転しているとは言い難い。
原発の状態は「落ち着いてきた」どころか「予断を許さない状況」だ。
原発事故の深刻さを示す国際評価尺度(INES)は4月12日、最悪の「レベル7」と評価された。
現在でも高濃度の汚染水が海に流れ出ていたり、セシウムが検出されたりしている。外国人が(もちろん日本人も)不安に感じるのも無理はない。
とはいえ、今回の外国メディアの震災報道は、外国人の私から見ても「それは違うぞ」と感じる記事が少なからず見受けられた。
■「海外の報道によると…」の違和感
● 陸前高田市で捜索活動を行う自衛隊員。
日本の報道ではほとんど見られないが、海外のメディアは遺体の写真を掲載することも多い。
こうした違いも不安を煽る一因になっている(と思う)
日本では、日本語以外のメディアは「外国メディア」とひとくくりにされる。
しかし私から見ると、外国メディアは大きく2つに分けられる。
1つは日本在住のジャーナリストが報じているもの。
そしてもう1つは今回の震災取材のために来日したジャーナリストが報じたもの。
そしてこの2つには、大きな「温度差」と、日本に対する「視点」の違いがある。
震災取材のために来日した外国人ジャーナリスト(メディア)は、
「地震や津波で壊滅的になった地域」や
「東京で起こった買い占めパニック」
をピンポイントで探し出し、大々的に報じていた。
彼らの中には初めて来日する者も多く、渋滞や繁華街の人の多さなど。
「日本の日常的な風景」
も、すべて震災報道に結びつけようとしている印象を持った。
そして
「地震と津波で日本は破壊された」
「原発事故で日本は衰退する」
「とにかく日本から逃げろ」
といった“刺激的”な報道をくり返していたのも、こうしたメディアだった。
一方、私を含む日本在住のジャーナリストは、こうした報道とは一線を画していた(と自負している)。
日本の生活者でもあるわれわれは、今回の震災を伝えると同時に、そこに生活している人々がどのような状況に置かれているのか、問題解決のために政府や東京電力/原子力安全・保安院がどのような対策を講じているのかに注目していた。
実際、私がいちばん信用していたのは、日本在住のジャーナリストによる英語の報道だった。
しかしそんな私も、一度だけ東京から離れようか悩んだことがある。
それは3月17日、米国が福島第一原子力発電所から80Km圏内にいる自国民に対し、避難勧告を出した時だ。
それまで日本政府は福島第一原子力発電所から30Km圏内地域の人を対象に、屋内退避/自主避難勧告を出していた。
ではこの50Kmの差は何なのか。
一部では80Kmという距離は国土の広い米国内基準だから深刻に考える必要はないという報道があった。
しかし私にとってそれは、屁理屈以外の何ものでもなかった。
また同時期にIAEA(国際原子力機関)が「(第一原発)が深刻な状況」と判断したり、米国国務長官であるヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏が「日本の情報は信頼できない」と発言したりしたことも、不安に拍車をかけた。
ほかの日本人と同様、「ただちに健康には影響がない」という政府の言い回しにも、違和感を覚えた。
そして何より政府や東京電力の会見が、深夜に行われていたことが不可解だった。
そんなに記者に来てほしくない内容の話をするのか、と。
こうした中、英国大使館は在日英国人の希望者に対し、ヨウ素酸カリウム(Potassium Iodate)を2日ぶん(4錠)無料で配布した。
たかだか2日ぶんでは意味がないと日本人の同僚に笑われたが、英国政府が自国民の健康を心配している “証”という意味では、大きいと思う。
● 英国大使館が在日英国人の希望者に対して配布したヨウ素酸カリウム(二日ぶん)。いつ飲めばよいのか迷っている
■警戒したのは放射能よりもパニック
実は、私がいちばん恐れていたのは、放射能でも余震でもなく東京でパニックが起こることだった。
パニックが起こった場合、最善策は街中に出ないことである。
一部メディアでは成田空港の出国ラッシュや空っぽになったスーパーの棚の様子などが報じられていたが、自宅周辺(浜松町)や会社周辺(泉岳寺)のスーパーやコンビニエンス・ストアで食品は売っている。
冷静に考えれば、パニックなど起こるはずはない。
あとから考えれば、成田空港の出国ラッシュは日本人ではなく外国人が大半だった。
そう考えると皮肉なものだ。
前述したとおり、東京に拠点を構える外資系(特に米国系)企業では、社員の安全確保のため、外国人社員を東京から一時退避させる動きが目立った。
退避にかかわる費用は、すべて会社負担という企業が多かった。
しかしだからといって、外資系企業が社員の健康を第一に考えているとは言えないようだ。
ある米国人は興味深い話をしてくれた
会社は「社員の安全のため」と公言しているが、
会社がいちばん恐れているのは、社員から訴えられること
だというのだ。
業務命令で赴任した地で被曝した(そこまで至らなくても健康被害を受けた)ら、当然社員は会社の責任を問うだろう。
生命にかかわることだけに、その賠償金額は莫大になるはずだ。
そうならないために会社は、
「日本政府が安全だと判断していた段階でも、社員の安全確保のためアクションを起こした」
という“エクスキューズ”が必要だったのだという。
* * *
最後に日本メディアの報道について、私が感じたことを紹介したい。
日本のメディアは、津波や地震の被害は大きく報じているが、原発事故の報道は抑制しているように感じた。
これはパニックを引き起こさないためか、原発事故に関する情報ソースが政府と東京電力しかないからなのかはわからない。
もちろん、不安を煽るような報道をする必要はない。
しかし、原発事故が明らかになった時点で事態の深刻さを指摘し、「レベル7」に匹敵する事故であると指摘していたジャーナリストは存在した。
パニックを警戒するあまり、日本の報道はこうした指摘を必要以上に抑えてしまったのではないだろうか。
私は日本の今後のエネルギー政策について、口を出す立場にない(ITジャーナリストがにわか知識だけで語れる内容ではない)。
しかし今回の事故で、少なくとも「原子力発電所は安全」でないことは明らかになった。
日本は今後、レベル7の原子力事故が引き起こした、あらゆる面での被害やその代償に直面することになる。
東北地方にあるIT関連の工場は、続々と操業を再開させている。彼らの復興にかける意気込みには、本当に頭が下がる。世界のIT業界は、彼らの復興を注目している。
政府や東京電力が、その足を引っ張ってはならない。
』
外国人と日本人の温度差というのはあるだろう。
日本人自身は日本から出ることはままならぬ。
私自身は海外におり娘は東京にいる。
娘に対して帰ってこいと言える立場にある。
ありがたいことだが、娘は行く場所を持っている。
でも、そうしなければならないような状況ではない。
が、である。
地面はしょっちゅう揺れている。
トラウマになりそうだとか、揺れたとたんに船酔いになりそうだとか言う人も多いらしい。
話によると、地震が発生すると地震警報でスイッチの入っている携帯電話が一斉に鳴り出すらしい。
東京大震災の可能性はないとはいえない。
日本中の地盤がこの打続く揺れで緩んできているという。
やはり外国人は安全をみて、日本を脱出したほうがいいと思う。
少なくとも地面の揺れがおさまるまでは。
そして電力事情からして、しばらくは日本は衰退する。
国全体がスリム化するまでは萎んでいく。
また、観光をはじめてして種々様々な産業が落ち込む。
なら娘は。
日本人なら日本にいろ。
最悪の状況はまだ来ていない。
もし、東京大震災が来て娘に何かあったらどうするか。
何も起こらない人もいるはずである。
なら、誰にでも平等の運である。
ツイいれば助かる、ツイテイナイならダメ。
ここに居たって、交通事故に巻き込まれて死ぬこともある。
ウンがよいなら、じっくりこういう非常時の世の動き、人の動きを見ておけ。
体に刻みこんでおけ。
ただボヤッと過ごすな。
一生のなかでこれほどの機会に出会うことはない。
これ以上の勉強はない。
ということだろう。
== 東日本大震災 ==
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